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技術・人文知識・国際業務(技人国)

技術・人文知識・国際業務と高度専門職の違いを徹底比較【第3回】転職・永住申請・不許可事例から考える選び方

公開日:2026年6月9日 | 最終更新日:2026年6月9日

この記事のポイント

・多くの外国人は、まず技人国ビザで経験を積み、その後に高度専門職を検討する

・高度専門職は永住や家族帯同で有利だが、転職時の手続きには注意が必要

・技人国でも、高度人材ポイントを満たせば永住申請の特例を利用できる場合がある

・在留資格選びは、転職予定・家族構成・永住計画を踏まえて判断することが重要

はじめに

前回は、高度専門職のポイント制度や優遇措置、企業側の加点制度について解説しました。

高度専門職には、永住許可要件の緩和や在留手続の優先処理など多くのメリットがあります。しかし、だからといって全ての外国人にとって高度専門職が最適な選択肢とは限りません。

実務では、「技人国ビザのまま働き続けた方がよいのか」「高度専門職へ変更した方がよいのか」「将来の永住申請を考えた場合はどちらが有利なのか」といった相談を受けることが少なくありません。

また、ポイント計算の誤りや立証資料の不足によって不許可となるケースや、転職時の手続に関する誤解も見受けられます。

第3回では、技人国ビザと高度専門職をどのような視点で選択すべきかを整理しながら、永住申請との関係、不許可事例、就労資格証明書の活用方法など、実務上重要となるポイントについて解説します。

技人国と高度専門職はどちらを選ぶべき?

日本で就職や転職を考える際、「技術・人文知識・国際業務(以下、技人国ビザ)」と「高度専門職」の違いが分からず、自分にはどちらが適しているのか悩む方も多いのではないでしょうか。

高度専門職には、永住許可要件の緩和や在留手続の優先処理などの優遇措置があります。そのため、「最初から高度専門職を目指した方がよいのではないか」と考える方も少なくありません。

しかし、実務上はまず技人国などの就労資格として適法に活動できるかを確認し、その上で高度専門職のポイント要件を満たすかを検討することになります。

そのため、「どちらが上か」という視点ではなく、ご自身の学歴・職歴・年収や将来のキャリアプランを踏まえて、どの制度が適しているかを判断することが重要です。

多くの外国人が「技人国」からスタートする理由

実務上、日本で就職する外国人の多くは、まず技人国ビザからスタートします。

特に新卒採用や若手人材の場合、高度専門職のポイント計算において重要となる「職歴(実務経験年数)」や「年収(最低300万円以上であり、かつ年齢に応じた基準額)」を満たせないケースが多いからです。

また、中小企業等(カテゴリー3・4)が受け入れる場合、高度専門職はポイントを証明するための客観的な「疎明資料」を全て揃える立証負担が大きくなります。そのため、まずは学歴と業務の関連性で許可が取れる技人国ビザで適法に就労し、経験と年収を上げてから高度専門職への変更を目指すのが一般的なルートです。

企業属性も重要なポイント!
高度専門職を検討しやすい人材とは

一方で、次のような方は就職時から高度専門職を検討できる可能性があります。

・修士号や博士号を有している方

・日本の大学や大学院を卒業した方

・複数の分野で学位を有している方

・高年収のITエンジニア

・研究職

・コンサルタント

・その他の高度な専門技術職

これらの方は、学歴や年収に関する加点によって高度専門職のポイント要件を満たす可能性があります。

また、実務上見落とされやすいのが、受入企業に関する加点制度です。

高度人材ポイント制では、外国人本人の学歴や職歴だけでなく、受入企業が一定の要件を満たしている場合にも加点が認められています。例えば、イノベーション促進支援措置の対象企業や、研究開発に積極的に取り組む企業、中小企業に関する特例要件などが加点対象となることがあります。

そのため、本人のポイントだけでは70点に届かない場合でも、企業側の加点を含めて計算すると高度専門職の要件を満たすケースがあります。

高度専門職は大手企業や研究機関に勤務する人だけの制度ではありません。企業の属性によっては、中小企業への就職であっても高度専門職の取得を検討できる可能性があります。

【実務のポイント】
高度専門職が必ずしも有利とは限らない

高度専門職には多くの優遇措置がありますが、全ての人にとって最適とは限りません。
実務上、デメリットとなり得るのが「転職時の厳格な縛り」です。

技人国ビザの場合、同じ職種(例:ITエンジニアから別会社のITエンジニア)への転職であれば、事後の「所属機関に関する届出」等を行うことで働き始めることができ、ビザの適合性は次回の在留期間更新時に審査されます。

しかし、高度専門職(1号)はパスポートの指定書に「特定の勤務先(会社名)」が指定されるため、転職する際には、たとえ全く同じ職務内容であっても、事前に「在留資格変更許可申請」を行い、新しい勤務先でのポイント計算に基づく許可を改めて得てからでなければ働くことができません。

また、転職によって年収が下がったり、転職先企業に特別加算(イノベーション加算等)がなかったりすると、ポイントが70点を下回り、高度専門職を維持できず技人国ビザへ変更せざるを得ないケースもあります。

ステップアップ転職を頻繁に行う予定がある場合は、手続きの柔軟性が高い技人国ビザの方が適しているケースもあります。

【行政書士のアドバイス】
高度専門職へ変更しなくても永住申請できる場合がある

外国人の方から、

「永住許可を早く取得したいので、高度専門職へ変更した方がよいのでしょうか」

というご相談を受けることがあります。

しかし、永住申請を目指す場合であっても、必ずしも高度専門職の在留資格へ変更しなければならないわけではありません。

永住許可に関するガイドラインでは、高度人材ポイント制による特例が設けられており、現在の在留資格が技術・人文知識・国際業務であっても、申請時点から遡って1年前または3年前の時点で一定以上のポイントを有していたことを立証できれば、高度人材としての永住申請特例の対象となる可能性があります。

例えば、

・80点以上で1年以上継続して在留している場合

・70点以上で3年以上継続して在留している場合

には、高度専門職の在留資格を取得していなくても、永住許可申請の特例を利用できる可能性があります。

そのため、転職の予定がある方や、今後のキャリアの選択肢を広く持ちたい方の中には、技人国のまま就労を継続し、将来的に高度人材ポイントを証明して永住申請を行うケースもあります。

一方で、すべてのケースで技人国のままが有利とは限りません。

例えば、

・配偶者にフルタイムで就労してもらいたい場合

・一定の条件のもとで親の帯同を希望する場合

・高度専門職固有の優遇措置を早期に利用したい場合

には、高度専門職への変更を検討するメリットがあります。

また、永住許可申請では、高度人材ポイントによる特例を満たしていても、現在有している在留資格の在留期間が短い場合には申請の可否に影響することがあります。

永住許可を受けるためには、現在有している在留資格について原則「最長の在留期間(当面の間は『3年』)」をもって在留していることが法律上の条件となります。したがって、いくらポイント計算で80点以上あり「みなし特例」を満たしていても、現在の技人国ビザの在留期間が「1年」である場合は、要件不適合として永住は不許可となります。そのため、状況によっては高度専門職への変更を選択した方が適切なケースもあります。

重要なのは、高度専門職への変更そのものを目的とするのではなく、

・現在のポイント数

・在留期間

・家族構成

・将来の転職予定

・永住申請の時期

を総合的に検討し、自身のキャリアプランに合った在留資格を選択することです。

審査で注意したい不許可事例ケース

学歴と業務内容が関連していないケース
特に「専門学校卒」は注意

大学等で学んだ内容と実際の業務内容が大きく異なる場合、関連性の立証が不十分であるとして許可が難しくなります。特に入管実務において注意すべきは「専門学校卒業者」を採用するケースです。

大学卒の場合は専攻と業務の関連性が「柔軟(緩やか)」に判断される傾向がありますが、専門学校卒の場合は「相当程度の関連性(直接的な結びつき)」が厳格に要求されます。

例えば、「イラストレーション学科」や「服飾デザイン学科」の専門学校を卒業した外国人を、語学力を活かす目的で「海外取引業務」や「通訳・翻訳」で採用しようとしても、専攻科目との関連性が認められず不許可となる事例が見られます。

実際の仕事内容が「単純労働」と判断されるケース
契約書より「実態」を重視

雇用契約書上の職種が「エンジニア」や「通訳」といった専門職として記載されていても、入管の審査では「実際に現場で何をするのか」という実態が徹底的に重視されます。実際の業務の大半が、反復訓練によって従事可能な「単純労働」であると判断される場合は不許可となります。

例えば入管の不許可事例では、「工場での製造業務で申請したが、現場の技能実習生が行う部品の組み立てや梱包と全く同じ作業であったケース」や、「派遣会社に翻訳・通訳として雇用されたが、実際の派遣先が小売店であり、単なる接客販売に従事させられていたケース」などが公表されています。

外国人に任せる専門的な業務が、社内に「十分な業務量」として存在しているかどうかが厳しく審査されます。

ポイント計算を誤って高度専門職を申請するケース

高度専門職では、ポイント計算を誤ったまま申請し、審査の結果、必要な70点に達しないと判断されて不許可となるケースがあります。

特に注意したいのが、「年収」と「職歴」の評価です。

年収計算の誤り

高度専門職では、年収がポイント計算の重要な要素となります。

しかし、実務上は年収の考え方を誤っているケースが少なくありません。

例えば、

・通勤手当などの実費弁償

・将来発生するか分からない残業代

・業績によって変動する不確定な手当

などは、ポイント計算上の年収として認められない場合があります。

また、高度専門職1号ロ(高度専門・技術活動)などでは、一定の最低年収基準が設けられており、他の項目で高得点を取得していても、年収要件を満たさなければ認定が難しくなります。

職歴を証明できないケース

職歴についてポイント加算を受ける場合には、その職歴を客観的な資料で証明する必要があります。

例えば、

・在職証明書

・職務内容証明書

・雇用契約書

などによって、勤務先や業務内容、勤務期間を説明できることが重要です。

特に海外企業での勤務歴については、退職後に証明書を取得することが難しい場合もあります。

そのため、高度専門職を検討している方は、転職や退職の際に職歴を証明できる資料を保管しておくことが望ましいでしょう。

実務上のポイント

高度専門職では、ポイント表上の自己計算だけでは足りません。

入管審査では、

・そのポイントが制度上認められるか

・客観的な証明資料があるか

まで確認されます。

そのため、「計算上は70点を超えている」と考えていても、証明資料が不足しているためにポイントが認められず、不許可となるケースがあります。

申請前には、ポイント計算だけでなく、それぞれの加点項目を裏付ける資料が揃っているかも確認することが重要です。

転職後の活動内容が許可時と異なるケース
更新時の不許可リスクと高度専門職の注意点

中途採用等で転職者を受け入れる際、転職後の業務内容が大きく変わる場合は特に注意が必要です。前職では「技人国ビザ」の対象活動に該当していても、新しい職務内容や企業の安定性が基準を満たしていなければ、次回の「在留期間更新時」に不許可となるリスクがあります。

さらに、「高度専門職1号」の外国人を中途採用する場合は重要な注意点があります。高度専門職1号はパスポートの指定書に「特定の勤務先」が指定されているため、たとえ同じ職務内容であっても、事前に「在留資格変更許可申請」を行う必要があります。許可を得ずに働き始めると不法就労となってしまいます。

「前の会社でビザが出ているから今回も大丈夫だろう」という安易な自己判断は、企業と外国人の双方を大きなリスクに晒します。

【行政書士のアドバイス】中途採用時は「就労資格証明書」も検討する

中途採用で技術・人文知識・国際業務(技人国)の在留資格を持つ外国人を採用する際、

「現在の在留期間がまだ残っているのであれば、特別な入管手続は不要ではないか」

と考える企業担当者の方もいらっしゃいます。

確かに、転職後の業務内容が現在の在留資格の範囲内であり、適切な届出が行われている場合には、直ちに就労できなくなるわけではありません。

しかし、在留期間更新許可申請の際には、新しい勤務先について改めて審査が行われます。

そのため、

・業務内容が技人国の活動に該当するか

・雇用条件が適正か

・企業として安定的な事業運営が行われているか

などが確認されます。

このような場合に活用を検討したいのが、「就労資格証明書交付申請」です。

就労資格証明書は、外国人本人が現在有している在留資格で、新しい勤務先における業務へ従事できるかについて、あらかじめ出入国在留管理庁に確認を求める制度です。

取得が義務付けられているわけではありませんが、採用後に在留資格との適合性が問題となるリスクを事前に把握しやすくなるというメリットがあります。

また、就労資格証明書が交付されている場合には、更新申請時の審査においても参考資料となるため、企業・外国人本人の双方にとって安心材料の一つとなります。

特に、初めて外国人採用を行う企業や、中途採用で業務内容の該当性に不安がある場合には、採用時に就労資格証明書の取得を検討する価値があるでしょう。

まとめ

ここまで全3回にわたり、技術・人文知識・国際業務(技人国ビザ)と高度専門職の違いについて解説してきました。

技人国ビザは、日本で専門的な業務に従事するための代表的な就労資格です。
一方、高度専門職は、一定以上の学歴や職歴、年収などを有する高度外国人材に対して優遇措置を認める制度です。

そのため、実務上は次の順番で考えることが重要になります。

1. 技人国ビザなどの就労資格に該当するか確認する 

2. 高度専門職のポイント要件を満たしているか確認する 

3. 転職予定や家族構成、永住申請の時期などを踏まえて制度を選択する 

高度専門職には多くのメリットがありますが、必ずしも全ての方にとって最適な制度とは限りません。

例えば、将来的に転職を予定している場合や、高度人材ポイントによる永住申請特例の活用を考えている場合には、技人国ビザのままキャリアを積み重ねる選択が適していることもあります。

反対に、家族帯同に関する優遇措置や永住申請の早期実現を重視する場合には、高度専門職への変更が有力な選択肢となるでしょう。

重要なのは、「自分の状況にどちらが適しているか」という視点で判断することです。

就職や転職、高度専門職への変更、永住申請などは、それぞれのタイミングによって必要な準備や最適な選択肢が変わります。制度の仕組みを正しく理解したうえで、自身のキャリアプランに合わせて検討することが大切です。

また、個別事情によって判断が分かれるケースも少なくありません。特に学歴や職歴と業務内容の関連性、高度人材ポイントの算定、永住申請との関係などについて不安がある場合は、早い段階で専門家へ相談しながら進めることをおすすめします。

監修者

行政書士事務所 Top Field

申請取次行政書士 上野文香

就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)を中心に外国人の在留資格申請をサポート

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