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公開日:2026年6月9日 | 最終更新日:2026年6月9日
・高度専門職は「技人国+ポイント評価」の制度
・高度専門職を取得するには、まず技人国など就労資格の要件を満たすか確認
・技人国ビザでは「専門的な業務内容」「学歴・職歴との関連性」「適正な報酬」が重要
・中小企業は雇用理由書などを活用し、専門業務の必要性や業務量を具体的に立証することが大切
日本で就職や転職を考えている外国人の方の中には、「技術・人文知識・国際業務(技人国ビザ)」と「高度専門職」の違いがよく分からないという方も多いのではないでしょうか。
特にITエンジニアや営業職、通訳・翻訳などの専門職として働く場合、高度専門職の優遇措置に注目し、「最初から高度専門職を目指した方がよいのではないか」と考えることもあるでしょう。
しかし、実務上はまず技人国ビザの許可要件を満たしているかを確認し、その上で高度専門職のポイント要件を検討するという順番で考えることが重要です。
第1回では、技人国ビザと高度専門職の制度上の違いを整理したうえで、技人国ビザの許可要件や審査で重視されるポイントについて解説します。
技人国ビザは、本邦の公私の機関との契約に基づいて、自然科学または人文科学の分野に属する専門的な知識や技術を活用して働く外国人のための在留資格です。
一般的に「就労ビザ」と呼ばれることが多く、日本企業へ就職する外国人の多くが利用しています。対象となる活動は、大きく「技術」「人文知識」「国際業務」の3分野に分かれます。
例えば、ITエンジニアやシステム開発業務は技術分野、営業や経理、人事などは人文知識分野、通訳・翻訳や海外取引業務などは国際業務分野に該当する可能性があります。
重要なのは、単に会社に雇用されることではなく、実際に従事する仕事内容が学術上の素養を背景とする一定水準以上の専門的活動に該当していることです。そのため、現場での単純労働(工場でのライン作業や店舗での接客販売など)は原則として認められません。
また、本人の「学歴(専攻科目)」と「従事する業務内容」との間に一定の関連性が求められる点が審査の重要なのポイントとなります。
高度専門職は、我が国の学術研究や経済の発展に寄与することが見込まれる、高度な専門性や能力を持つ外国人材を積極的に受け入れるために設けられた制度です。
学歴、職歴、年収、年齢、研究実績などをポイント化し、その合計が「70点以上」に達した場合に認められます。高度専門職には1号(イ・ロ・ハ)と2号がありますが、多くの方が最初に検討するのは、技人国ビザの活動に相当する「高度専門職1号ロ(高度専門・技術活動)」です。
この制度の最大の特徴は、通常の就労資格よりも「複合的な在留活動の許容」「在留期間5年の付与」「永住許可要件の大幅な緩和」といった出入国在留管理上の優遇措置が用意されていることにあります。
一方で実務上注意すべき点は、「最低年収基準」の存在です。高度専門職1号ロの場合、ポイントの合計が70点を超えていたとしても、年収(見込み)が「300万円」に達しない場合は、高度外国人材として認定されることはありません。
技人国ビザは「どのような仕事をするか」を中心に判断する在留資格です。
一方、高度専門職は「どの程度高度な人材であるか」をポイント制で評価する制度です。
入管の審査実務において高度専門職は、就労の在留資格に関する要件(在留資格該当性・上陸許可基準適合性)を満たす者の中から高度外国人材を認定する仕組みとなっています。そのため、実務上は次の順番で考えます。
1. 技人国ビザなどの就労資格に該当する活動・要件を満たしているか
2. 高度専門職のポイント要件(70点以上、年収300万円以上など)を満たすか
つまり、高度専門職は技人国ビザと完全に独立した別の制度というよりも、「通常の就労資格の基準をクリアした上で、さらに一定の条件を満たした高度人材に追加の優遇を与える制度」と理解すると分かりやすいです。
【行政書士のアドバイス(審査をスムーズに通すための+α)】
企業の人事担当者様や外国人ご本人から、「ポイント計算をしたら70点を超えたので、すぐに高度専門職に変更したい」というご相談をよくいただきますが、実務上、「高度専門職1号」の在留資格は【所属機関(働く会社)が指定される】という縛りがある点に最も注意が必要です。
「技人国ビザ」であれば、同じような専門業務(例えばITエンジニアから別の会社のITエンジニア)へ転職する場合、在留期限が残っていれば事後の届出のみで直ちに不法就労となるわけではありません(次回の更新時に審査されます)。
しかし、「高度専門職1号」はパスポートに貼付される指定書に「A株式会社」と記載され、その会社で働くことのみが許可されています。そのため、転職をする場合は、たとえ同じ職種であっても、事前に「新しい会社での高度専門職の在留資格変更許可申請」を行い、許可を得てからでないと働き始めることができません。
優秀な人材を採用する際、「現在、高度専門職1号を持っているから大丈夫」と安易に考えてそのまま自社で働かせてしまうと、不法就労となってしまいます。「高度専門職は優遇が多い分、転職時の入管手続きのハードルは厳格である」という点を社内で正しく認識し、採用スケジュールに余裕を持たせることが、実務上のポイントとなります。
入管の審査では、まず行おうとする活動が在留資格の対象となるかという「該当性」が確認されます。技人国ビザに該当するためには、その業務が「学術上の素養を背景とする一定水準以上の専門的能力を必要とする活動」であることが絶対条件となります。
例えば、システムエンジニアや機械設計であれば技術分野、経営企画や営業職であれば人文知識分野、通訳・翻訳や海外取引であれば国際業務分野への該当性が検討されます。
一方で、倉庫での仕分け作業、工場での部品組み立て、店舗でのレジ打ちや単なる接客といった、反復訓練によって従事可能な「単純作業(単純労働)」が業務の中心である場合は、技人国ビザの活動には該当しないと判断され、不許可となります。
ただしこれらの単純業務であっても、それが日本人新卒社員等に対しても同様に行われる「入社当初の実務研修」の一環であり、在留期間の大半を占めるものではないと合理的に説明できる場合には、許可される可能性があります。
該当性が認められても、それだけで許可されるわけではありません。
次に上陸許可基準省令に基づき、従事する業務に必要な知識を修得しているか(学歴・職歴要件)が審査されます。一般的には、以下のいずれかのルートを満たす必要があります。
・大学卒業者:国内外の大学・短期大学等で関連科目を専攻して卒業していること。
・日本の専門学校卒業者:関連科目を専攻して「本邦の」専門学校を卒業し、専門士又は高度専門士の称号を付与されていること(海外の専門学校卒は対象外です)。
・実務経験者:技術・人文知識分野は10年以上、国際業務分野は3年以上の関連する実務経験があること(大学卒業者が翻訳・通訳・語学指導に従事する場合は3年の実務経験は免除されます)。
ここで審査のポイントとなるのが、学校での「専攻科目」と実際の「業務内容」との間の関連性です。
例えば、情報工学を専攻した大学卒業者がエンジニアとして働く場合は、関連性を容易に立証できます。入管の実務では、大学卒の場合はこの関連性が「柔軟(緩やか)」に判断される傾向がありますが、専門学校卒の場合は原則として「相当程度の関連性(直接的な結びつき)」が厳格に要求されるため、成績証明書等を用いたより入念な説明が必要になります。
なお、ITエンジニア等の場合は、法務大臣が告示で定める「情報処理技術に関する試験又は資格(IT告示)」を有していれば、これらの学歴・実務経験要件を満たすものとして扱われます。
入管の審査は外国人本人だけでなく、受け入れる企業側(雇用条件や事業の安定性)にも及びます。特に重要なのが、「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること」という法的要件です。これは、外国人であることを理由とした不当な低賃金労働を防ぐための規定です。
例えば入管の不許可事例では、「大卒の外国人を月額13万5千円でエンジニアとして採用しようとしたが、同時に採用した日本人新卒エンジニアの給与が月額18万円であったため不許可になった」というケースが公表されています。業務内容が同じ日本人従業員がいる場合は、給与規程等に照らし合わせて同等以上の給与水準に設定しなければ、許可は難しくなる傾向があります。
【行政書士のアドバイス(審査をスムーズに通すための+α)】
企業の人事担当者様が「大学で経営学を専攻した外国人を、営業職(人文知識分野)で採用するのは問題ないだろう」と安心されているケースがよくありますが、カテゴリー3・4の中小企業様の場合、審査のもう一つの大きな壁が「十分な業務量の立証」です。
入管の審査官は、提出された「決算文書」や「事業内容を明らかにする案内書(パンフレット等)」を見て、「この規模の会社で、本当に外国人が毎日フルタイムでこなすだけの『海外取引』や『マーケティング』の専門業務があるのか? 実は現場での力仕事や接客ばかりさせるのではないか?」と疑いの目を持ちます。
これをクリアするためには、単に雇用契約書を出すだけでなく、「雇用理由書」を独自に作成し添付することが有効です。
「現在、当社は海外〇〇国への進出を進めており、〇〇に関する市場調査や現地の取引先との交渉が必要不可欠である。しかし社内にはその知見と語学力を持つ人材がおらず、〇〇学を専攻し母国語と日本語に堪能な本申請人を採用するに至った。具体的な一日の業務スケジュールは以下の通りである」といったように、会社の事業展開の方向性と、外国人の学歴・専門性、そして具体的な日々の業務内容が一直線に繋がるストーリーを論理的に説明することが、追加資料を防ぎ、スピーディーな許可を得るための秘訣となります。
今回は、技人国ビザと高度専門職の基本的な違いや、技人国ビザの許可要件について解説しました。
技人国ビザでは、業務内容が在留資格に該当すること、学歴や職歴と業務内容に関連性があること、日本人と同等以上の報酬が確保されていることが重要な判断ポイントとなります。
また、高度専門職は技人国ビザとは単純に並列の制度ではなく、まず就労資格としての要件を満たしたうえで、高度人材としての評価を行う制度であることも理解しておきたいポイントです。
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